今回はよくある”人間に反発する暴走”とは一括りにできないような、ひとクセあるSF作品をピックアップしてみました。どれも2020年以降と、比較的新しい作品で揃えています。
今回は感想のセクションに、ネタバレ感想も折りたたみ形式で入れています(タブを開くことで読めます。デフォルトは閉じていますのでご安心下さい)。
『Companion(コンパニオン)』
こんな人におすすめ
- アンドロイドがパートナーの作品を見たい人
- ブラックユーモアの効いたスリラーが好きな人
- 流血描写に抵抗がない人
- 100分以下のテンポの良い作品を観たい人
公開年: 2025年
製作国: アメリカ
上映時間: 約97分
監督・脚本: ドリュー・ハンコック
製作: ザック・クレガー(『バーバリアン』) ほか
出演: ソフィー・サッチャー、ジャック・クエイド、ルーカス・ゲイジ、ハーヴィー・ギレン ほか
配信サイト:Amazon Prime Video / U-NEXT ほか
【あらすじ】
恋人のジョシュと週末を過ごすため、友人たちが待つ湖畔の豪邸を訪れたアイリス。幸せそうなカップルに見える二人だったが、ある出来事をきっかけに穏やかだった週末は一変する。混乱の中でアイリスが突きつけられたのは、自分自身についての受け入れがたい事実だった。
【感想】
この作品はU-NEXTでアンドロイドものを漁りまくってた流れで見た作品。
サムネと序盤の雰囲気から、真面目(?)なサイコスリラーと思っていたら、ラブコメつまんだところからいきなりバイオレンスぶちこまれてびっくりした。
流れは人間同士のサスペンスでもあるような流れなんだけど、そこに「ユーザーに従順なアンドロイド」、「コントロール可能」、「感情や記憶はプログラムされたもの」などの要素が効いてくる。
ちなみに、女性アンドロイドも男性アンドロイドも出てくる。単なるお人形なだけじゃなく、システム的な面も描かれているのが良かった。
個人的にオススメだけど、バイオレンス描写が苦手な方は注意したほうが良い作品。
前知識無しのほうが絶対楽しめると思うので、これ以上はネタバレのほうに書きます。
ネタバレ注意。
登場人物ほぼ全員クソ。
どうにもこうにもジョシュのクズっぷりが凄まじい。あらかじめアイリスの知能を低く設定し、恋人ロボットというより最初から”自分にとって都合の良い道具”として所有していた自己中男。しかも「金欲しいからアイリス改造して安全装置切って金持ちのセルゲイ殺したろ!アンドロイドが暴走したってことにしたろ!」というクズ男。
女友達のキャットもなかなかのクズで、ジョシュと共謀しアイリスを利用する計画にも乗っている。でも後から「セルゲイは悪い人じゃなかった」とか言い出す。彼女は自分だけ不安定な愛人(しかも人間)という位置から、血迷ったのかなと感じた。ジョシュにはアイリス(アンドロイド)、イーライには愛し合っているパトリック(アンドロイド)がいるし、孤独を感じたのかもしれない。
で、イーライとパトリックのカップルが凄く良かった。殺伐とした中の癒し。この映画における人間とアンドロイドの純愛要素はここだった。パトリックは旧型なので、アイリスより少しぎこちなくあどけないロボット感を出しているのも良かったと思う。そしてジョシュによるパトリック上書きでパトリック闇落ち、闇落ちしてもなおイーライとの記憶と愛情のデータは消えておらず、自分でシャットダウンするというエモさ。愛はなかったジョシュとアイリスとは対象的に描かれている二人に感じた。
アイリスは最初の頃はちょっとパッとしない感じだったし、外国語も苦手。それは自分をアンドロイドと知らなかったのと、知能を下げられていたため。自ら端末で知能を100%に上げてからの覚醒っぷり、面白かったです。
この作品、「裏切りとアンドロイドの暴走」っていうあらすじが罠だけど、裏切りも暴走も全部人間たち(主にジョシュ)の事という皮肉。
ストーリー途中までB級ホラー感を感じ、「もしかして胸糞END?」と不安を抱きつつ見てたけど、個人的には良い終わり方でした。
『デンジャー・ゾーン(原題:Outside the Wire)』
こんな人におすすめ
- アンドロイド・ロボットが出てくる軍事アクションを観たい人
- AIやアンドロイドの「自我」について考えるのが好きな人
- アンドロイドのメカニックな体の演出が好きな人
- 数年前に視聴して微妙だったけどもう一度見たくなってる人
公開年: 2021年
製作国: アメリカ
上映時間: 約115分
監督: ミカエル・ハフストローム
出演:アンソニー・マッキー、ダムソン・イドリス、エミリー・ビーチャム ほか
配信サイト:Netflix
【あらすじ】
2036年、東欧の紛争地帯。米軍のドローンパイロットのハープは、戦場で独断行動をとった罰として最前線の基地へ送られる。そこで彼の上官となったのは、人間にしか見えない軍事用アンドロイド、リオ大尉だった。
陽気で型破りなリオに連れ出され、ハープは初めて生身で”画面の向こう側”の戦場を歩くことになる。だが、リオには軍にも明かしていない目的があった。
【感想】
初見の私の感想は、「途中まで面白かったのに後半どうした?」という感想だった。Netflixオリジナルものにありがちな、後半急展開・駆け足・最終的にふわっと終わる系だったか、くらいに思っていた。レビューサイトの評価がやけに低いのもわからないでもなかった。
しかしAIが身近になった今、改めて視聴してみたら印象が変わった。この作品、面白い。だからこそ惜しい。
たぶん、2021~2022年の一般層には早かった気がする(元々SF好きには刺さったかもしれないが)。
ハープではなく、リオ側に感情移入(?)をしてみると面白い。「AIって本当は何考えてるのかな」と思う人間にはハマりそうなSF。ストーリーに色々な要素を詰め込み過ぎた感は否めないが、「AIネタを見ること」に重きを置いて見てみると面白かった。
シャイなハープと陽気なリオとの掛け合いシーンはとても楽しく、軍事ものに興味がなくても見やすかった。
AIロボット兵(ガンプ)達のデザインと戦闘もカッコいい。ちらっと移る犬型ロボット兵も可愛かった。
キャストがらみで言うなら、ヒーロー的なアンソニー・マッキー目当てで観ると少々ガッカリするかもしれないが、「AIの暴走と論理」という視点で見れば鋭いストーリーであり、観た後にふと考えたくなるビターなSFだと思う。
個人的にダムソン・イドリスが俳優として好きなので、推したいNetflix作品。
以下、ネタバレ感想あり。
ネタバレ注意。
低評価の理由が、殆ど「後半が意味不明」「ハープに感情移入できない」「アンドロイドが闇落ちしたオチ」といったものだった。私も初見は何とも言えないモヤモヤがあった。
時を置いて再視聴した時に、ようやく全体が理解できた。リオは闇落ちしたわけでも、人間を裏切ろうとしてやったわけでもない。AI的な最適解として、「メカ兵器がある限り戦争は終わらない。それを終わらせるには、自分を生み出した国を消すしかない」と極端な判断をしたわけだ。人間から見たら暴走、AIから見たら最適解だったのだと思う。その極端な思考は『ターミネーター』を思い出すが、あれは「人類を滅ぼそう」としてやっていたが、リオは「将来の人類を守るため」という真逆の存在。
最初は人間であるハープのほうが淡々としたロボットのようで、アンドロイドのリオのほうが人間味に溢れているという対比。内向的なハープと陽気なリオのバディ的掛け合い。そういった前半の良さに浸っていると、途中からの展開が頭に入ってこない。おそらく殆どの視聴者が前半で思うのは「ドローン画面でしか戦争を知らなかったハープにリオが戦争の惨さを教え、ハープが成長して行くバディストーリーかな」だと思う。途中まであってるっちゃあってる、しかし目的が違った。
リオはどんなに人間的に振る舞っていても、思考は純然たるAIであり、人間と同じような感情もない。だから極端な結論も出し実行しようとする。さらに安全装置により自分だけでは実行はできないため、ハープのような人間を待っていた。人間を利用はしたが、それは未来の大勢の人類を救うためという。
ここまでの内容だけ考えるとストーリー的にも面白いのに、アンドロイドネタ・アクション・ハープの人間味を取り戻させること・反戦など色々詰め込みすぎたのだと思う。
そして、ハープのパッとしなさすぎるキャラ。初見では、淡々とした後にオロオロしてもっさり行動していた印象しかなかった。再視聴した時は、印象が変わった。「ハープはZ世代的なドライさを持ったキャラクターとして描かれている」というレビューを読んで妙に納得した。現代のリアルな人間の青年を描きすぎたのかもしれない。
個人的には、
ハープ「3歳のくせに」
リオ「5歳だ」
という会話シーンが好きでした。
あと、ロボット兵士が人間にいじめられているのを見てリオがイラッとして注意するシーンも好きだった。が、あれは「感情があるふり」をしたのかも?…。
『アンドロイド2040(原題:R.I.A. / Override)』
こんな人におすすめ
- アンドロイドを利用する人間側のドラマが観たい人
- 『ブラック・ミラー』ふうSFサスペンス・スリラーが好きな人
- 復讐・陰謀・メディアが絡む話が好きな人
- 低予算インディー映画が観たい人
公開年: 2020年
製作国: イギリス
上映時間: 約94分
監督・脚本: リチャード・コールトン
出演:ルーク・ゴス、ジェス・インピアッツィ、ディーン・ケイン ほか
配信サイト:Amazon Prime Video / U-NEXT ほか
【あらすじ】
2040年。1950年代風のドールハウスのような家で、リアは完璧な妻として毎日を過ごしている。毎朝、同じように目を覚まし、同じように一日を始める。完璧な家事、完璧な笑顔、完璧な妻としての振る舞い。ただし、隣にいる「夫」は日ごとに別の男だった。
【感想】
U-NEXTのマイリストに入れながら、サムネを見た時点で漂う怪しさで、なかなか見なかった作品。
実際見てみると、思ったよりも酷くなかった。サムネのB級感は国内版がこうなのかと思ったら、元々のメインビジュアルがこうだった。しかし邦題のタイトルは酷い。検索すると同名のあやしげなDVDが出てくるが、そっちではない。
この作品、配信サイトにほぼほぼストーリーが載っている。それでも「思っていたよりも面白かった」。
ちなみにストーリーを全く知らないで見れば開始30分は入れ子構造的な作りであり、毎日変わらない台詞とふるまいをするリアと、夫のジャックだけ変わる。何も知らずに観たほうが、おそらくSFみがあって面白い。
ちなみに大人向けシーンがありそうで、さほどない。
そして、アンドロイド感も、たいしてない。だいぶ人形寄りの設計なので、ここで取り上げておいて何だが「アンドロイド映画」としては物足りないかもしれない。逆に完璧なアンドロイドではないからくり、だからこそ可能な事がストーリー中盤で出てくる。そして後半は、『ブラック・ミラー』を彷彿とさせる雰囲気がある。
演技や演出も荒いところはあるが、見放題で期待せず見たら意外と面白かった作品。
昔のバービー人形を思い出す、レトロなドールハウスのような「リアとジャックの家」も可愛かった。
ネタバレ注意
配信サイトのあらすじはほぼネタバレ全開だが、本ブログではあえて書かなかった。ネタバレ欄なので改めてあらすじを書くが、ストーリーのベースは”リアリティー・ショー”であり、完璧な容姿を持つ女性型AIアンドロイドの「リア」と、一般応募の「夫」役ジャック(男性とは限らない)と理想的な夫婦生活を送る様子が生中継される。しかしある日、アメリカ副大統領の息子が番組制作側にも秘密で「夫」役として参加する。従順だったはずの彼女は突如として暴走し、生放送のカメラが回り続ける中、副大統領の息子を人質にとって立てこもりを始める…というものだ。ここまででも作品内で約一時間は経過するのだが、丸ごと書かれている。
さらにあらすじネタバレをすると、リアは自律型アンドロイドというよりは、制作側のスタッフルームでコントロールされている。副大統領の息子が舞台である家に到着後、リアは恨みのある者にハッキングされる。恨みある者はリアを通して復讐を成し遂げる。副大統領も巻き込み、生放送中にハッキングされ一時映像が映らなくなり慌てるスタジオ側だが、事態を知ってからは「これはネタになる!」と大興奮で放送し続ける。視聴者がお茶の間で凍ってるオンエア中のシーンもクスッとくるものがあり、番組制作側の「何でもネタにするメディア感」が表現されていて地味に面白かった。復讐劇部分はなかなか雑だが、それが逆にシュールで重くない。
この後、ラストの10分間くらいが一番面白い。ブラック・ミラーにありそうなオチだった。
以上、アンドロイドの暴走を描いた映画を取り上げました。
今回取り上げた3本は、どれも「人間の思い通りには動かなくなったアンドロイド」が登場する作品です。王道の名作SFとは少し違う、どこかクセのある3作品。でも「アンドロイドの暴走」というあるあるな題材を、それぞれ違った角度から楽しめる作品でした。
